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小学生 工作/冬来たりなば

カテゴリ:小学生クラス

  • 作成:本田 雄揮

ほころぶ梅の薫りが風と遊び、凍てつく土が少しずつぬかるみをみせる季節。小学生クラスでは1月から行っていた工作『春を待つオブジェ』が完成を迎え始めました。例年では夏と冬に行っている工作ですが、今年は年明けからのスタートとなり、せっかくなのでこの季節らしさをふんだんに込めたものを、と考えました。桜や梅の枯れ枝を組み合わせ、そこに和のテイストを基調とした装飾を施した壁飾りです。新たな年への期待、そして願いを込め、丹念に仕上げました。

 

作品はたくさん準備された大小様々な枝を選ぶところから始まりました。冬の寂寥感じるそれらをバランスよく組み合わせ作品の骨格を作った後、枝に張った針金の間を、裂いて細長くされた古い着物の端切れを編むように通して飾り付けていきます。この通称『布マフラ―』はコツを掴むまで難しいものの慣れてくれば夢中にさせてくれる魅力があり、少しずつ折り重なっていく落ち着いた彩りが、まさに冬から春への移ろいを表しているかのようです。

 

その後、枝に色調を合わせた小さく切ったフェルトやアイロンビーズ、江戸打ち紐を追加していきます。そのままであればなんてことないものでも、色の組み合わせや並べる順番、その動きや流れ、紐であれば編むことによってステキな『飾り』となり、作品を盛り立てます。地道で細かく、場合によっては複雑な作業が続きますが、子供達はどんどん挑戦し、時には挫折し、しかしなお続け、ひとつずつしっかりと達成していました。ただ待つだけではなく、自ら掴みに行こうとする力が備わってきたことを感じます。

 

最後に祝儀袋などで見られる紅白の水引飾りをあしらいます。水引には様々な結び方、伴う意味があり、最近では気軽にアクセサリーなどにも用いられているようですね。ただの長い素麺みたいなものが、目を惹くほどかっこよい形状となるのは、折り紙に似ています。日本文化の神髄ではないでしょうか。難易度の高い結び方を何度も挑戦する子や、オリジナルで躍動感あふれるフォルムに仕上げる子も、形式に囚われず皆思考と試行を繰り返しながら行っていました。ともあれどんな形でも取り付けると作品がきゅっと引き締まり、同時にやはりというか、なんとなくのめでたさが加わりました。

 

それらが終わったら、本当の最後に作品を長く大切にするための『壊れないかチェック』と『見栄えはこれでよいかチェック』を行い、完成。乾いた枝に、何かを待ちわびるかのような奥ゆかしい色調の様々な飾りが、春雨の如く潤いを与え、季節の過渡独特の雰囲気を表すことができました。

 

作り始めた頃から約二カ月、「『春を待つ』じゃなくて『春の中の』になっちゃってるよ!」と子供達も言っていました。確かにそうかもしれませんね。でも、この作品を作ることで皆がそんな小さな春にも気が付けたこと、そしてそれを喜びとしてくれたことが、私は何より嬉しいです。また、今回において『春』という言葉が表すものは、単に季節のことだけではありません。それぞれの飾りや全体のテーマを通して、それを考え、ちょっとでも感じ取って部屋に飾って貰えると、それもまた何より嬉しいです。

見つけた小さな春と作った小さな春、共に大切にして下さいね。

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