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小学生 絵画/おとをたのしませる

カテゴリ:小学生クラス

  • 作成:本田 雄揮

霖雨降りそぼる折、小学生クラス春の絵画制作最後となるのは、音を色や形で表す『聴想画』。毎年一度、この6月に行っているお馴染みの制作です。例年は教室で音楽を聴き制作しているのですが、今年は趣向を変え、自ら音を集めるべく靴を履き片手にメモを携え、街へと繰り出しました。『まちのおと』が今回のテーマです。日常心に留めることのない音を拾い上げ、応用を利かせた絵の具での技法用い表現しました。

 

商店街、公園、駅、住宅街…。様々な音は常に無秩序、且つ飾らずに混在していますが、普段はそれをほとんど意識しません。何故なら生活する上で自らが自然と『音の中』の一部となっているからです。そこから一歩、『外』へと踏み出すこと。聴き飽きたかの如き生活音を別の角度から捉えてみること。そうして初めて聴こえる、心に伝わってくる音があることを知ります。それはずっとそこにあったのに気付かず、それでもやっと見つけた宝物のようにキラキラと輝き放っています。やや強引にも広義に解すれば、一辺倒な価値観では測れないものがあること、その視点が豊かな生活を約束してくれることを知ります。しかし別段、このような話をせずとも子供達は柔軟に受け入れ、街での音集めを楽しんでいました。

 

予定よりも多く重なった音のメモを元に、具体的なものを描くのではなく単純な色や線や形、そう、抽象的に表す説明を行った際も屈託なき理解、その早さに内で目を見張りました。理解しやすい価値観である『写真のような絵』からほぼ反対の位置に属する『一見何が描いてあるか分からない絵』。正直小学生に圧倒的に人気のないこのジャンルに、ステキさとカッコよさを求め、筆を動かすことができること。それ自体がなんてステキでなんてカッコよいのでしょう。だって完成した絵、抽象表現を前に、自信を携えた口元で『まちのおとを描いたんだ』と言ってのけ、詳細や苦心を語ることができるなんて。憧れすら感じます。『一見分からない』ことに価値を置いていないとできない芸当です。今回の作品を持ち帰った際には、特に大いに語って頂きたいものです。

 

『音を楽しむ』と書いて音楽、という言い回しはよく耳にします。しかし今回、子供達は新たなスタンス、価値観との距離、認識を以って『音を楽しませる』ことを共に行っていたように、結果的にですが確かに感じました。

『おとを聴く』に多様な意味が込められていること、しかしそんなことは特に意に介さずただ楽しんで、ただ楽しませて描いていたこと。それは本当にすごいことなのですよ。是非皆に教えてあげて下さい。

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