『あいさつ言葉』(墨の表現)
カテゴリ:小学生クラス
- 作成:辻悦子
◎ 講師:本田雄揮
ねらい
・墨を使い普段の絵画とは違う質感や色「和」の魅力を感じる。
・文字の構成を工夫し、あいさつ言葉のもつニュアンスを形に託す。
・あいさつ言葉の場面を具体的に表現し、大事な役割があることに気づく。
新年を迎え、清々しい気持ちで取り組むのは「墨の表現」。
ここ数年、1月は日本画の模写を行ってきましたが、今回は視点を変え、自分の生活の中から出てきた「あいさつ言葉」がテーマです。日常で数多くのあいさつを交わしながら過ごしている私達ですが、それを形に残すにはどうしたらよいのでしょうか。頭を使いながら、白と黒の世界に挑戦です。
まずはどんなあいさつがあるのか、思いつく限り挙げていきます。
こんにちは、さようなら、ありがとう、ごめんなさい、いってきます…。
お馴染みのものから、メリークリスマス、あけましておめでとうなど季節感溢れるものまで。
なかには、ごきげんよう、ちょうだいいたしますといった珍しい言葉も。それどこでつかっているの?
アトリエ以外での子どもの生活が垣間見えました。
お気に入りをひとつ決めたら、半紙に墨で言葉を描いていきます。
ここでのポイントは「書く」のではなく「描く」こと。
レッスンは学校の書写の授業ではありませんし、何より講師はお習字の心得はありません。
お手本のように書くことよりも、その字を使ってあいさつの「気持ち」を描くこと。
「書写の時間なら怒られるような、絵のような字でもいいし、少しぐらい読めなくても構わないよ」
「字」を「絵」として捉えるのは正直少し難しいかな?と思ったのですが、そこはさすが表現に対する嗅覚が鋭い。
筆選び、墨の量、構成、スピード、息遣い…。
紙の上だけでは分からない、あらゆる工夫を自然と試み、アトリエの空気を研ぎ澄ませていきました。
その後、描いた数枚の中からひとつ選び、画用紙に貼り、周りを額として飾ります。
伊勢型紙を用いた切り紙や、あいさつ言葉を使っている場面をたくさん描きこみ、作品をより深め完成。
あいさつに対する気持ちも同時に深まったようで、レッスン始まりと終わりの礼も、一段と背筋が伸び、一文字ずつ確かめるように発していたのも、きっと気のせいではないでしょう。
日常でさらりと使っているあいさつ言葉の、本来持っている数多くの意味を想像し、余計な色を付けずに純粋な気持ちを乗せて表現する。均一的な「あいさつが出来る子」ではなく、「あいさつにその時の気持ちを含めることが出来る子」になって欲しい。教科書には載らない、しかしどこまでも美しい字の作品を見てそんなことを感じた1月でした。