幼児/じっくりたっぷり
カテゴリ:幼児クラス
- 作成:辻悦子
講師:福田希美
春に積み重ねた経験は夏にぐんぐんと枝葉を伸ばし、子どもたちの心は開放感に満ちていました。その瑞々しいパワーは、じっくりたっぷりと、秋冬の制作に注ぎ込まれまれます。
◇イカと小魚
「今日は海からお客さんが来てます。」と言うと「えーっ・・・」「マグロかな」「カニかも」「サメだったりして」と子どもたちは一斉に想像を膨らませます。
実際に本物のイカと対面すると「イカだ!」「ぎゃー!気持ち悪い・・」と素直な反応。
大騒ぎの中、見て・匂いを確かめ・指先で形を探り・手のひらで温度を感じて・・少しずつイカに迫ると、次第に子どもたちの目つきは感動や探索に変わっていきました。
「つぶつぶってこんなにいっぱいあるんだね・・」「それ吸盤っていうんだよ。吸盤って取れるんだね。すげぇ。」「ねぇ!よくみると黒い点々がある」「なんかホクロっぽい(笑)」「目が青いよ」「青?!白じゃない?」と子どもたちの興味は止まりません。
その後の制作は、イカとの対面シーンとは打って変わって真剣そのものでした。
まずは絵の具での混色からスタート。これまでに絵の具の扱いやクレパスを用いた混色には随分と慣れて来たので、それぞれの経験から自信を持ってチューブを絞ります。続いてイカの周りに小魚を描くと「これはお母さんとお父さん。」「この子はイカの友達」など空想が広がります。
最後はイカの住処を想って背景の色づくりを行い、仕上げに割り箸ペンの不思議な感触を楽しみながら細部を描き込みました。
今にも泳ぎ出しそうな躍動感あふれる作品が次々と誕生。完成作品を誇らしげな表情で持ち帰る子どもたちの姿は、これまでにないほどに逞しく見えました。
また、イカと小魚(アジ・イワシ)は確かに海から来たのですが、購入元は商店街の鮮魚店です。
作品として描かせていただく上で、生き物のルーツや命についても子どもたちと一緒に考えました。「ちょっと可哀想かも」「でも食べないのが一番かわいそうなんだよ」「描いたら嬉しいのかな・・」「お腹のとこ柔らかいから優しく触ったほうがいいんじゃない?」と、子どもたちなりに思考を巡らせ、配慮の様子が伺えました。
子どもたちには、作品を生み出すと同時にモチーフを丁寧に扱い、いつでも自分の新たな表現や発見に出会い続けてほしいと考えています。そして実はそんな子どもたちの姿に一番学ばせてもらっているのは私たち大人だったりもするのです。
◇風の小びと
「なんと。今日は針を使います。」の言葉に「針知ってる!」「えっ、ママが危ないからダメって言ってたよ!」と緊張が走りつつ、子どもたちの目の輝きは“いいの!?やってみたい”“早く触りたい!!”をうったえていました。
刺繍針、刺繍糸、刺繍枠、フェルト・・まずは道具の紹介をすると、初めて見る物たちに期待を膨らめます。
私が針に糸を通し、針先を慎重に扱いながら縫い始めると、子どもたちは眉間にしわを寄せ息を凝らして見守ってくれました。
縫い刺しの連続性に気づくと、実演を見ていた子どもたちの緊張も次第に溶けていきます。すると、子どもたちはその場で生まれたオリジナルのリズムに乗って「さして〜♩ひっくり返して〜♩シュゥ〜ッピタ‼︎さして〜♩・・」と唱えながら楽しそうに手元を動かし始めました。
“エア縫い刺し”でノリノリのスタートでしたが、いよいよ本物の針を手にすると空気は静まり返り、各自手元に集中・・
今回の制作に当たってお母様方も「さすがに針は持たせた事ないです・・」と驚きの様子でしたが、しっかりとルールを伝えれば、案外子どもたちの方が安全に使えるものです。
慣れてくると、少しずつ“風と小びと”の表現を楽しむ姿が広がっていきました。
ゴッホの作品(画集絵本)との出会いをきっかけに、子どもたちは点線が奏でるグルグルの世界を表現。青の“同系色”を選びながらフェルトの上に風を起こすと、そこには小びと(ビーズ)が遊びに来ます。ビーズの配置を考えながら「風と追いかけっこしてるよ」「ここで小びとがみんなで相談してる」と、お話によって刺繍作品がデザインされていきます・・
ぎこちないステッチの流れ。ビーズで引っ張られた糸。まちまちな幅間隔で絶妙なリズム。ひと縫いする度に、一生懸命に取り組む子どもたちの呼吸や確かな手跡を感じます。
子どもたちは時間を忘れて没頭しているので、毎回授業の終わりには清々しい表情から大きなため息が響きました。
また、会を重ねる毎に「早くお家に持って帰りたい!」の声が増えていきます。
そんな言葉を耳にする度に、子ども達にとって作品のゴールは完成ではなく、ご家族にお披露目する瞬間なんだと感じました。
◇良いお年を
12月最後の授業はお楽しみ会でした。どんぐり遊び・クリスマスパーティー(乾杯)・絵本の貸出しイベントと、楽しい事が盛りだくさん。みんなで相談したり大声で笑ったりと、子どもたちにとってまさにご褒美の1日でした。
最後には長期にわたって完成させた「風の小びと」をお家の方にお披露目。子どもたちは「すっごい頑張った!」「ママにプレゼントだよ」「いつもありがとう」と、思い思いの言葉を伝えます。お母様方は皆笑顔で、目を細めてお子様の頬を撫でたりギュッと抱きしめたり・・
ふと横を見ると、みなこ先生も感動の涙を堪えていました。私たちにとってもご褒美のような今年の締めくくりでした。
年が明けて、子どもたちと子どもたちの新たな作品に出会えることを楽しみにしております。みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。
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