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見る人から伝える人へ

カテゴリ:小学生高学年

  • 作成:本田 雄揮

1月にスタートした『冨嶽三十六景神奈川沖浪裏』の模写も、約3ヶ月の長い制作を終え、ついに完成に至りました。墨で線描きをした後、絵の具の重色を用いじっくりと波の藍を出し、アレンジを加えた空をグラデーションで表現、そして仕上げに波しぶきを施しゴール。黙々とした作業が続く中、最後までよく集中を切らさず、作品と向かい合うことができました。ただの模写ではない、ちゃんと自分の作品へと昇華できている素晴らしさ、実に見事でした。早く終わったクラスでは作品の発表を行い、自分が考えた場面の説明や、作者の葛飾北斎に質問を述べました。「この後舟は沈みます」「刷師が1番スゴイと思います」など、ユーモア溢れる発言に皆で笑顔になり、それが今年度最後のレッスンを飾るに相応しいものとなりました。

今回、とても充実した制作となりましたが、同時に大変充実した「鑑賞」でもありました。作者や作品を自ら調べ、細部に至るまで余すところなく形を観察し、色の出し方を何度も繰り返し研究、そして自分なりの解釈を直接作品に加えていく。「波の先端はこんな形じゃない」「この青では大波の感じは出ない」そんなことを思って作品を見続けた3ヶ月。稀代の名作を体感し続けた3ヶ月。この鑑賞経験は、大きな宝となるに違いありません。この先葛飾北斎の作品と出会った時、もうただの「すごい」という感想は出ることはないでしょう。何がすごいのか、どこが他と違うのか、さらにはもっとこうしたら良くなるぞ、という自分だけの視点、価値の置き方ができる人になっているでしょう。そしてそういう人は、きっとそれを、周りや自分の子供、孫まで伝えてくれることでしょう。鑑賞の力とは、ただ豊かに作品を見ることができるかだけではありません。感じたことを伝えることができるかも含まれているのです。この制作を経て、この作品に止まらず「見る人」から「伝える人」に皆が成長できたことに、大きな喜びを感じます。平成の最後に、この作品が特別なものとなったこと、誇りをもって新しい時代へと伝えていって下さい。

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