ゆきむすめー1
カテゴリ:小学生クラス
- 作成:辻悦子
小学生クラス 制作:2011年2月
◎制作のねらい
・絵本「ゆきむすめ」(著:内田 莉莎子 挿絵:佐藤 忠良)を通して、彫刻科としての佐藤忠良さんを紹介する。
・ゆきむすめや女の子達の気持ちの動きを想像して描く。
・鉛筆のタッチの表現を活かした絵作りを目指す。
◎「ゆきむすめ」のあらすじ…
子供がいないおじいさんおばあさんが雪遊びをしている子ども達をみて、自分達も雪で女の子をつくります。すると突然雪で作った女の子が動き出し、やがて人間の娘へと成長します。夏が来て、ゆきむすめは友達に誘われ森へ行きました。女の子達が遊ぶ中、暑さが苦手なゆきむすめは川のほとりで足を冷し夜が来るのを待 ちました。日が落ちて女の子達が焚き火を始め、一人が焚き火の飛び越えごっこを思いつきます。炎が怖いゆきむすめでしたが、女の子達に笑われ、思い切って焚き火を飛び越えました。そして白い煙になって空への昇って消えてしまいました。
◎感想/講師:中家総子
今回は「ゆきむすめ」というロシア民謡の絵本を元にお絵かきしました。挿絵は彫刻家の佐藤忠良さんが描いています。佐藤さんが描いた絵本の挿絵では「おおきなかぶ」がとても有名です。私が大学時代、佐藤先生の考え方や制作に対する姿勢にとても感動したので子ども達にも是非紹介したいと思っていたところ、ちょう ど世田谷美術館で展覧会が開催されていたのでこの機会にと思い今回の制作に至りました。
最初の週に絵本を読んだ後、絵のベース作りをしました。ゆきむすめにぴったりの氷の表現です。水を多めに溶いた絵の具の上にしわくちゃのサランラップをかぶせると氷が張ったような面白い表情が作れます。翌週、白く残した部分に「ゆきむすめ」の場面を描きました。もう絵本を一度を読み、どんな感想をもったか、ゆきむすめや女の子達の気持ちについてもみんなで考えてみました。
『ゆきむすめは女の子達に笑われてどんなふうに思ったかな?』
『はずかしかった!』『悲しかったと思う…。』
『女の子達はゆきむすめが煙になって消えてしまってどういう気持ちになった?』
『笑ったことをすごく後悔した。』『どこにいったのか不思議と思った。』
など様々な意見が飛び交います。
『ゆきむすめは雪の国に帰ったんだよ。』『おじいさんとおばあさんがかわいそう…』
『おじいさんは冬になったらまたゆきむすめをつくるとおもう。』
『うん!それでもう暑い場所には連れて行かないようにするの!』
お話の中に入りを想いを膨らませてくれました。
描写には鉛筆を使いました。モノクロなので氷の色の表現が活きてきます。技術指導で鉛筆の線を活かしたタッチを紹介しました。ゆきむすめや焚き火の周りにタッチを入れたことで絵にメリハリや動きが出て表情豊かになりました。以前ブログでも紹介した佐藤忠良さんの図工の目当てを制作前にクラス全員で音読しました。「上手く描けることより、自分で考えたことを自分の手を動かし一生懸命に表現しようとすることが大切」ということを伝えることができ、子供達も自分で想像した「ゆきむすめ」を描こうと頑張ってくれました。
佐藤忠良さんは身近な人々の中にある人間の生命の美しさを彫刻作品にした人です。基本を大切に、謙虚な気持ちで日々スケッチや素描を繰り返し積み上げられた観察力と、職人のような熟練の技術で表現された作品は、派手ではないけれど、気品と優美さがにじみ出ています。展覧会では今回の「ゆきむすめ」「おおきなかぶ」の原画も展示しています。この機会に是非世田谷美術館に足をお運び頂いて、彫刻の魅力に触れてみて下さい。
◎子どもの美術/佐藤忠良が小学生の図工の教科書に寄せた文章
図画工作の時間は、じょうずに絵をかいたり、ものを作ったりするのがめあてではありません。
じょうずにかこうとするよりも、見たり考えたりしたことを、自分で感じたとおりにかいたり作ったりすることが大切です。
しんけんに絵をかき、ものを作り続けていると、じょうずになるだけでなく、人としての感じ方も育ちます。
このくり返しのなかで、自然の大きさがわかり、どんな人にならなければならないかがわかってきます。
これがめあてです。