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テレピンを使って描写を深める
[色鉛筆画] 2017.07.14
テレピンを使って描写を深める
おとなクラスの色鉛筆画では、4~6月の3ヶ月をかけてパプリカの制作を行いました。 パプリカだけで3ヶ月も!?と思うかも知れませんが、今回は「テレピン」という油絵用の溶剤を使用する方法で描写を深める事に挑戦しましたので、期間を長めに設定しました。 今回のブログではこの描き方についてご紹介したいと思います。   まず、「テレピン」という画材の説明です。 テレピンは、松脂を蒸留してできる液体で、油絵具に混ぜると絵具をサラサラにできます。塗った後は完全に蒸発しますので、画面に残る事はありません。   このテレピンの性質を利用して『油性色鉛筆を用い、ある程度描き進める⇒テレピンをティッシュなどに付けて画面を軽くたたく(色鉛筆を溶かす)⇒色鉛筆で描き進める⇒テレピンでたたく』と何度か繰り返しながら制作を進めて行きます。 そうする事で、ただ描き進めていくだけでは得られない効果を出す事ができます。 効果は大きく3つあります。   ① 描き込みがし易くなる  色鉛筆にはロウが含まれているため、何度も重ねていくとその成分で紙がツルツルになってしまい、色鉛筆が滑って色が乗りづらくなってきます。 テレピンで溶かす事でそれを緩和し、さらなる描き込みを可能にします。   ②深い色が表現できる  色鉛筆の粉を溶かす事で、ただ塗るだけでは出ない複雑な色味を表現できます。   ③偶然性を生み出せる  色鉛筆は自分が描いた痕跡が積み重なって絵が出来ていく画材です。 それは色鉛筆の良い所でもあるのですが、一方で絵具のように、にじむ、垂れる、筆跡が残るなど、自分が意図しない所で偶然できる表情が生まれにくい画材でもあります。 テレピンを使う事で、その偶然性を引き起こし、それに反応して描き進めていく事で、絵に強さを出していきます。   今回は、皆さん初めてだったので戸惑いがあったと思いますが、テレピンを使った効果にうまく反応し、今までより一歩踏み込んだ作品が仕上がりました。 7月からは、テレピンでの描き方でサザエを描く事に挑戦しています。 サザエのゴツゴツした質感や複雑な色がどのように表現されるのか、完成が楽しみです!
技法を広げ、深める年に
[色鉛筆画] 2017.04.28
技法を広げ、深める年に
おとなクラスでは、3月の展覧会の後、会場で飾られていたお花をモチーフに制作を行いました。 展覧会の出品作に長い期間集中して取り組んだ直後だったので、緊張感から解き放たれながらも、その濃密な時間の中で培った技術や経験がのびのびと発揮されている作品ができたように思います。 物の形を立体的に表すという基本を土台にしながら、作者がお花に抱いた印象や、描いた絵をどのように見せたいか、といった事まで表現できています。   さて、お花の制作が3月に終わり、4月から新年度がスタートしましたが、この1年はタイトルに挙げた通り「色鉛筆の技法を広げ、深める年」にしたいと考えています。 テレピンという油絵用の溶剤を使った描き方。色紙を地にして明るい色で描き起こす方法。描写と併せ色面を大きく用いた描き方など、色鉛筆の基本を押さえながらも、新しい視点を取り入れた制作ができればと考えています。 生徒さんの一人ひとりの画力やご希望もお聞きしながら、色鉛筆を通して、絵画・美術の色々な面を体験して頂けるように努めて行きたいと思います。 また、色鉛筆画の描き方や、ステップアップして行ける課題をまとめた資料の準備も進めていますので、土曜日午前クラス以外で色鉛筆画に興味がある方にも情報共有ができるようにしていく事も計画しています。   最後に、ゴールデンウィークも控えていますので、少し遠方ですが日帰りでも行ける展覧会の情報をご紹介します。   ***** ヴァンジ彫刻庭園美術館 開館15周年記念展「生命の樹 ***** 静岡のJR東海道線「三島駅」からバスで30分程行った所にある「ヴァンジ彫刻庭園美術館」の15周年記念展です。 この美術館は、コレクションがとても充実していて、現代の活躍している作家の作品が色々と見られるので、とてもお勧めです。また、お庭も広く綺麗なので、ゆったりした雰囲気で鑑賞できますし、美術館の空間自体も面白いです。 会期も4月~11月までと長いので、連休後でもお時間のある時に、小旅行気分で是非お出かけ頂けたらと思います! ●ヴァンジ彫刻庭園美術館ホームページ https://www.clematis-no-oka.co.jp/vangi-museum/
作品展2017の感想 おとな会場:横山
[デッサン油絵] 2017.03.20
作品展2017の感想 おとな会場:横山
3月の作品展 おとな会場にお越し頂きました皆様、ご来場誠にありがとうございました。また、生徒の皆さんはお忙しい中での制作、本当にお疲れ様でした。追い込みの作品制作は、精神的にも体力的にも大変だったかと思います。ですが、そのかいあって1人ひとりの充実した作品が見られるとても素晴らしい展覧会になりました。 私は、色鉛筆画の講師として指導を始めてから2回目の作品展だったのですが、今回は作品制作への指導に加えて、搬入とキャプション制作を担当しました。搬入では、事前に生徒さんにラベル付けなどをご協力頂いた事、また当日には生徒さんや生徒さんの保護者様にもお手伝いを頂けた事で、大変スムーズに作品展示を行えました。今年は1人1点と作品数を絞った事もあり、作品の高さや作品同士の間隔など細かい点についても十分に調整する時間が取れました。また、キャプションについては、前回の作品展からマイナーチェンジを行い、よりシンプルなデザインとし、紙もグレードを上げたものに変更しました。キャプションも額などと同様、間接的にですが作品に影響するものですので、皆さんの作品がより良く見えるよう、細かい事ですが今後も改善を行っていきたいと思います。 最後に、色鉛筆画の事についても触れたいと思います。2枚目の画像は、色鉛筆画をもう数年経験されている生徒さんの展示作品です。本ブログで途中経過もご紹介させて頂きましたが、このような完成となりました。色鉛筆での重ねた色の複雑さは勿論のこと、絵の作り自体もただ物を見て描くだけではなく、なんとも言えない美しい光が表現されていて、「この光景をどう感じているのか」という作者のまなざしを感じさせるものとなっています。重色の仕方など、基本が十分に理解できているからこその1つステップアップした作品だと思います。こちらで紹介しきれませんが、色鉛筆画に取り組んで下さっている方は、本当に意欲的でまた真摯に絵に向き合っていて、それがとても絵に表れています。(そして、講師も皆さんの関心の高さに大変助けられています)この作品展で、そのような作品ができた事、またその作品を多くの来場者の皆さんに見て頂けた事を大変嬉しく思います。 次年度では、溶剤を使った描き方や色紙に描いてみるなどの新しい事も計画しています。個々人のレベルに合わせながらも、技法や絵の作り方の幅を広げられるような一年になるようにしたいと考えています。生徒さん1人ひとりに実りある一年になるよう努めて参りますので、どうぞよろしくお願い致します。
3月の展覧会に向けて~途中経過紹介~
[色鉛筆画] 2016.11.11
3月の展覧会に向けて~途中経過紹介~
10月より、土曜日おとなクラス(午前)の講師となりました横山大河です。 2014年4月より特別講座講師として月1回の色鉛筆クラスを担当してきました。1年半特別講座を続ける中で、生徒さんにも色鉛筆の描き方が定着してきたように思います。そうした中で、今年の10月で特別講座は一旦終了とし、色鉛筆画を描く方が多い「土曜日おとなクラス(午前)」を新たに担当する事となりました。 色鉛筆画の技法はもちろんの事、絵画の基礎知識や作家の紹介など、広く美術についても学べる場を提供していきたいと考えています。まずは、クラスの生徒さん一人ひとりの個性を知り、その方に合った指導ができるようにする所から努めて参ります。どうぞよろしくお願い致します。 さて、現在このクラスでは3月の展覧会に向けての作品を制作しています。皆さん4~5ヶ月間かけて制作されるので、どれも力作ぞろいです。今回はその中から2点、色鉛筆画の途中経過をご紹介します。 ●街並みを描いた作品(画像上)この作品の作者は、かなり色鉛筆画の経験が豊富なので、ただ写実的に描くのではなく、街並みに黄色やオレンジなどの色点を絡ませて描いています。また画面中央の建物の壁が緑ですが、これはこの上から赤を重ね、色味のあるグレーを作り出すための下地です。色鉛筆画では、いくつも色を重ね複雑な色合いを作っていくのですが、その仕組みを良く理解して効果的に描き進められています。ここから完成に向けて、街並みの写実的な描き方と色点との関係をどうしていくかが課題であり、面白い所だと思います。 ●お花を描いた作品(画像下)まだ淡いですが、丁寧に描かれていてとても好感が持てる作品です。素直に見たまま描いているようですが、モチーフに対して背景を平面的に描き分けている所など、作者から「絵をこう見せたい!」という思いが伝わってきて、それもとても良い点だと思います。完成に向けて、画面全体を濃くしながらまだかなり描きこみが必要ですが、色鉛筆の繊細さが上手く表れている作品になるように思います。 ここから追い込みに入り大変だと思いますが、どの作品も完成が楽しみです!
ぼかしで表現する遠近感
[色鉛筆画] 2016.08.05
ぼかしで表現する遠近感
 第3回~5回の色鉛筆講座では、3回に渡り「ぼかしによる遠近感の表現」を学びました。色鉛筆はグラデーションを細かく調整しながら描く事ができるので、この技法が使えるとぐっと表現の幅が広がります。 今回の課題では、木片を3つ配置し、どれにピントを合わせるかの設定から始めました。ピントを合わせた木片からの距離に応じ、その他の木片をぼかして描く事で、遠近感を強調したり、主役となる木片を目立たせる事が出来ます。設定したピントに応じてぼかして描く部分については、見えているそのままに描くわけではないため、今までの課題より難易度は高めでした。しかし、その分画面の隅々にまで意識が及ぶため、完成作品も習作という事を超えて、1つの絵としてより表現力の強いものになったと思います。 今回は静物画でしたが、風景画や人物画にぼかしの表現を取り入れてみても面白いかも知れません。まずは、対象をしっかり立体的に描けるという基本が大切ですが、基本が身に付いてきたら、ステップアップとして色々な描き方を試してみると、新たな発見があり良いと思います。 また、絵ではなく写真なのですが、実際にぼかしの効果を利用している作家さんがいるのでご紹介します。●本城直季さん実際の風景なのですが、画面の周りをぼやかす事で、ミニチュアのジオラマのような不思議な光景となっています。
色の質を意識する 色鉛筆編
[色鉛筆画] 2016.06.03
色の質を意識する 色鉛筆編
今回の講座では、前回に引き続き「色の質を表現する」事を学びました。前回は質に注目するため、色を省き鉛筆を用いましたが、今回はいよいよ色鉛筆での描写に入りました。(鉛筆での描写の内容については→こちらをご覧下さい。) 紙の目を潰し、色の質を変えて描写する今回の課題ですが、色鉛筆には鉛筆のように硬さの種類がありません。そのため、紙の目を潰す場合は、「薄い色で筆圧を上げて描く」または「1度描いた箇所を消して、また描く」というやり方になります。戸惑いながらも積極的に紙の目に対してアクションを起こし、それぞれ学びのある作品が出来たと思います。ですが「色の質」という要素が1つ加わる事で、生徒の皆さんに少し混乱があったようにも感じました。陰影も描きながら…重色も考えながら…紙の目の潰し方も考えながら…と、色々な要素を同時に考えながら描くと混乱してしまうかも知れません。 そんな時は、1つの色には1つの要素だけを与えるようにすると良いです。例えば、この色は影を描く色。この色は固有色を塗る色。この色は反射光の部分の紙の目を潰す色。などという具合です。そして、描く要素を変える際には、一緒に使う色も変えましょう。そうする事で自然と色の層ができ、複雑な絵になっていきます。描きながら考えるべき事は多いですが、同時にやろうとせず、一つひとつの要素を積み重ねていくと、混乱せずに絵を進めて行く事ができると思います。 ※2016年度から「初級コース」「上級コース」に分けて講座を行っています。初級コースの内容については、既に別のブログで紹介しているため、ここでは上級コースの内容を中心に紹介しています。(初級コースの内容については→こちらをご覧下さい。)
色の質を意識する 鉛筆編
[色鉛筆画] 2016.05.06
色の質を意識する 鉛筆編
  色鉛筆クラスでは、4月から初級と上級の2つにコースを分けて新年度をスタートしました。初級コースでは、昨年度と同じように、立方体を青とその補色のオレンジで描写しました。(詳しくは昨年のブログをご覧下さい →こちら)上級コースでは、明度、色相、彩度に続く要素として、色の質の表現に挑戦しました。また、質の違いを分かりやすくするために、今回はあえて色を省き鉛筆での制作としました。 鉛筆や色鉛筆では、絵具と違い厚く塗ったり、薄く塗ったりなど描材自体の質を変化させる事ができません。そのため、「支持体=紙」を変化させ質の違いを出していきます。具体的には、描きながら紙の目(紙の表面にある凸凹)を潰す事で、鉛筆の発色のさせ方を変えていきます。なかなか言葉だけでは実感しづらいですが、皆さん描いたり消したりを繰り返しながら、上手く紙の目をコントロールして制作をする事ができたと思います。回りこみや陰影の表現など、硬めの鉛筆を使いとても良く表現できていました。次回は今回の講座を踏まえ、色の質を意識しながら、いよいよ色鉛筆での制作に挑戦したいと思います! また、今回は新年度最初のブログなので、色鉛筆の作家さんを紹介したいと思います。●吉村大星さん猫をテーマに色鉛筆で制作をされています。山口県で活動を行っており、なかなか関東での展示は無いかも知れませんが、実物が見られる機会があれば是非見て頂きたい作家さんです。草花の描写や猫のふんわりとした質感がとても参考になると思います。
自由制作:最終回
[色鉛筆画] 2016.03.28
自由制作:最終回
 ◎講師:横山大河/制作:2016 3月1月~3月まで、3回に渡り行ってきた自由制作も今回で最後となりました。皆さんそれぞれの個性が出て、どれも力作が揃いました。時間が足りず、もう少し手を入れたいという箇所もあったかも知れませんが、長い時間絵と向き合っていく中で、手ごたえを感じられる部分・瞬間があったのではないかと思います。 色鉛筆は、描き始めてから完成までにとても時間がかかる画材です。一気に塗る事はできませんし、濃い色を出すには何回も重ねる必要があります。また、修正するのにも限界があり、大きく画面を転換する事も苦手な画材です。絵の具に比べると自由度が低く、非常に根気を要する作業が必要ですが、完成した際には、自分が手をかけた分だけ密度の濃い画面を得ることができます。複雑な色彩や独特な絵肌は色鉛筆でしか表現できないものだと思います。 その人の描写の痕跡全てが積み重なって、最終的な画面が出来てきます。「きれいな絵だからきれいな人」という訳ではありませんが、手がかかる画材だからこそ、その人の人となりや考えまで絵に滲み出てきているように感じる事があります。皆さんの作品を見ていて、どの作品からも絵に対する真摯な姿勢が感じられ、とても嬉しく思いました。 今回の講座で2015年度の色鉛筆クラスは終了となります。本年度受講下さった方、またブログをご覧頂いた方ありがとうございました。 来年度も色鉛筆クラスの開講を予定していますので、是非色々な方に色鉛筆での絵画制作の体験をして頂きたいです。初めての方は、色鉛筆独自の技法を体験して頂き、色鉛筆で描いた事があるという方は、さらに描写の幅を広げる、深める事を学んで頂きたいと考えています。 また、自分自身も色鉛筆画のさらなる研究を重ね、本講座の内容をより充実したものにしていきたいと思います!
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