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小学生 絵画/倣い習う②

カテゴリ:小学生クラス

  • 作成:本田 雄揮

《続き》今回の制作は「模写」。言葉だけの意味を考えると現存する絵画を真似して写すということですが、実はただそっくりにコピー機で複写したように行うことではありません。その作品の奥に潜んでいる作者の気持ち、息遣いを読み取り、筆遣いや色彩計画に思いを馳せること。作品自体を写すのみならず、「作者を模倣する」ことで初めてその作品の神髄を知ることができること。たとえ形がそっくりにならずとも、その精神を倣えばそれが模写であり、ゴールはひとつではないということ。そのような学び方があることを伝え、特に今回は若冲の「線」の描き方に着目し、子供達は時間をかけ美しい線の練習を行いました。描く際の若冲の動きがどのようなものであったか、筆の持ち方は、線の長さは、スピードは、姿勢は、呼吸は…。原画を観察し、そこから空想を広げ、何本も何本も繰り返し描き、最上の一本を目指す。まさに今年度の集大成といえる制作。スケッチブックはその試みによってあっという間に埋められていきました。

 

練習を重ね、自信が芽生えたらいざ本番。一発勝負の緊張から咳払いひとつも憚られるような張り詰めた空間が自ずと生み出され、漲る集中は教室を満たし、その中で徐々に姿を現してゆく美しい鶏達。水を含んだスポンジを握りしめた時のように、吸収したもの全てが余すところなくそこに残されました。墨の美しさ、そして自分の解釈で描かれた線の美しさ。皆しっかりと「模写」をすることができていました。その後、線を大切にしながら絵の具によって彩色。鶏冠にはアクリルガッシュを用いながら発色にも気を配り、丁寧に丁寧に色を重ね、最後は台紙に貼り仕立てついに完成。長い制作、本当にお疲れ様でした。クラスで並べた完成作品は、若冲の線や色を倣いながらもそこから得た「習い」がそれぞれの作者の良さとして表れ、愛らしいもの、猛々しいもの、おとなしそうなもの、派手なものなど千差万別、まさに子供達の様でとても嬉しくなりました。

 

「模写をすること」の本当の意味を若冲の鶏を通して学び、あらゆる作品に対してまた一歩踏み込んで鑑賞できるようになった皆さん。一度描いてみることでしか分からない作者の思いが全ての作品に込められていることを知り、自らの制作にもきっと活かしてくれることでしょう。完成した際、皆に聞いた「伊藤若冲はどんな人だった?」に対して一年生が答えてくれた「身近な生き物を愛した人」の言葉には、模写をする前よりも親密な気持ちが込められていたように感じました。描いた鶏をずっと愛して下さいね。

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