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嘘のない線

カテゴリ:小学生クラス

  • 作成:本田 雄揮

空っ風が梅のほころびを撫で、寒さの中にも春の訪れを感じさせる季節。2017年最初の制作は、木炭による自画像を行いました。ほぼ初めて扱う木炭という描画材にときめきと戸惑いを覚えながら、じっくりと自身を見つめ取り組む姿は、実にたくましく、作品に対する熱意が漲っていました。

絵を「描く」のではなく「つくる」。

他人でも描ける「似顔絵」ではなく、自分にしか描けない「自画像」。

「外見」をそっくりにするばかりではなく、写真にも写らない「内面」を見つめて表現する。

そのような指導の下、完成した作品は、どれも作者の「今」を描き切ったものばかりでした。

 

「顔を描く」となると、特に現代では漫画的な表現が溢れているので、ついどこかで見たことのある表現方法になってしまうことが多くあります。それはある意味、そういう時代ということで仕方のないことです。しかし、そのような表現で描かれた自画像は、漫画でいうところの「その他大勢」であって決して「主人公」ではない。頭の中にあるどこかで見た「目」や「鼻」を描いたところで、それは誰でもない「他人」になってしまう。そうではなく、今この瞬間に自分が目にした、自身が感じた自己の姿を、頭を空っぽにして紙に出し切って欲しい。そのような講師の思いが伝わったのか、鏡を見つめる目、手の動き、修正を加え続ける姿は、もうそれだけで充分に美しいものでした。そのようにして描かれたものは、どんなに歪んでいたって、全て「嘘のない線」。成長し続ける自分自身を、懸命に捉えようとして溢れ出た、全てが本当の線。何度も消して残った指の跡ですら、価値あるものです。作品としてこんなに素晴らしいものは滅多にありません。

 

今回の作品は、残り1ヶ月を切った作品展に展示される予定です。全員が「主人公」の自画像、今から並ぶのが私も楽しみです。是非とも足をお運び願います。

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