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光と音
[小学生高学年] 2017.09.11
光と音
先週から始まった秋の制作。子供上級、子供油絵クラス共に早速熱気に帯び、皆張り切っています。今回も長い制作になりますが、毎回ずっと同じことを繰り返しているわけではありません。視野を広げて制作するには、違ったことを行っていくことがとても大切。そんなわけで今回は、夏に行った抽象画、工作の紹介です。 まずは抽象画。『街』や『夏』の音をテーマに、モノトーンで表現しました。大きな刷毛を利用し、墨の濃淡でベースを作り、その上に様々な太さの白、黒のペンで形を描きこんでいきます。デッサンで学んだグラデーションを思い出しながら、墨で出来た偶然の形に反応し、粘り強く白と黒の線を重ねていきます。ひとつの色しか出せないペンでも、このように時間をかけて重ねていけば、美しい中間のトーンがにじみ出てきます。余白、バランス、細部、全体像など、絵画として核心に迫るような話も、経験を積んだ高学年には驚くほど響き、自分のものにしていきます。カラフルなものだけが美しいのではなく、写実的なものだけが上手いわけではない。多様を認めることのできる心が、深く表現された、素晴らしい作品でした。 次に夏の工作。銅板にニードルで穴を空け模様を描き、筒状にした中心にろうそくを灯す『小さな灯籠』。工程自体は難しくありませんが、だからこそ独自のアイデアと丁寧な作業が求められます。切り紙で作った形を基に進めていくのですが、どれくらい穴を空けたらよいのか、どの部分を思い切ってそのまま残すのか、など、考えることは高度で絵画的。自分の作品が他者からどのように見えるのか、現状よりも良くするには何が必要か、頭を絞って作品と向き合える姿。これも高学年ならではのものです。暗闇の中で静かに、しかし可憐に灯る完成作品が、それぞれの夏の終わりを彩ってくれました。 経験が積み重なることによって人は成長していく。視点も、方法も、気持ちも、全てが変化していく。そんな当たり前の事を、毎回、改めて感じさせてくれる高学年クラス。秋からの制作も、とても楽しみです。
夏の美術鑑賞会
[小学生高学年] 2017.08.07
夏の美術鑑賞会
先週、子供上級、子供油絵、中高生クラス合同で、夏の美術鑑賞会が開催されました。今年は神奈川県立近代美術館葉山館の『没後90年 萬鐵五郎展』を鑑賞、その後秋谷海岸で砂のオブジェ制作を行い、大変充実した時を皆で過ごしました。 暑さもしのぎやすい薄曇り、蝉しぐれを全身に感じ到着した葉山館。展示内容は作品数約300点というボリュームで、萬鐵五郎という一人の絵描きが、どのような変遷を辿ったのかが詳しく紹介されていました。デッサン、水彩画、油絵、水墨画と、技法も様々。また、描いた年代、環境、心情の違いでさらに広がる表現の豊かさが、鑑賞する者を圧倒していました。これだけの情報量だと、作品全てと正面から向き合い、鑑賞することはなかなか骨が折れるな…と、講師の心配もよそに、皆の鑑賞は真剣そのもの。ひとつひとつの作品にグッと近づき、絵の具の迫力を肌で吸収しようとする子。自分の作品と比べ表現方法をじっくり考える子。今日仲良くなった3人でお互いコメントを述べながら、楽し気にゆっくり回っていく女の子達。作者の考え方や絵描きとしてのバランスのとり方など、精神性に思いを馳せる中高生。全員が瞳を輝かせ、誰に教わった訳ではない、自分の鑑賞スタイルを持ち、驚くほど立派な感想を抱いていました。それは、頭ごなしの否定や、無防備な肯定などの色眼鏡が全くない、素直な『絵が好き』という気持ちによる輝き。自分の制作を、眼前の作品に繋げていける豊かな心。春から感じていた皆の『良い作品が描きたい』という熱い思いが、鑑賞という形でも伺うことができました。予定時刻を過ぎるまでじっくりと鑑賞した作品、きっと秋からの制作に活かされていくことでしょう。 その後、予定していた前田川散策は、前日の大雨で危険ということで、昼食の後、秋谷海岸に移動、砂のオブジェ制作に取り掛かりました。2グループに分かれ、海岸に落ちているものを利用し、それぞれ考えたテーマを基に制作。大自然に翻弄されながら、石や枯れ枝、流れ着いていた板などに敏感に反応し、協力して形にしていく作業は、クラス、年齢を超え、とても楽しいものでした。砂浜に描いた線が波にさらわれてもめげません。保護者の方も、ただ見守るだけでなく積極的に参加してもらい、枯れ枝による生け花、見事なネーミングなど、鋭いセンスで応じて頂きました。全員が作品制作を通してコミュニケーションを図っていくことは、ここでしかできない、アトリエ5のもうひとつのかたちでもあります。ただ見ている人は一人もいなく、何らかのアクションが作品上で影響し合うことの喜びが、完成作品に満ち満ちていました。 美術を通して触れ合った仲間。きっとこれから君達の大きな支えとなってくれることでしょう。 最後に皆で行ったシャボン玉が、砂浜の完成作品を優しく取り囲んだ後、天高く、そして水平線の彼方へ消えていく姿が、楽しく美しい夏の一日を穏やかに締めてくれました。 *活動の様子をfacebookのアルバムにしました。→☆
色を深めた3ヶ月~子供油絵クラス合評会~
[小学生高学年] 2017.07.15
色を深めた3ヶ月~子供油絵クラス合評会~
昨日、子供油絵クラス・春の合評会が行われました。お暑い中お集まりいただいた保護者の皆様、誠にありがとうございました。 花香る春から新緑を経て、季節は夏。真っ白だったキャンバスは、3ヶ月経った今、見事な色彩と構成で彩られました。初めての油絵、これが一旦区切りとなる油絵。それぞれの思いを1人ずつ発表し、お互いを労う姿は、作品と共に成長できたことを感じさせてくれるものでした。   自分の培ってきた色づくりのノウハウを一旦壊し、さらに深めた子。 常に作品と対話し、難しいビンを最後には透明にできた子。 両手に筆を持ち、食べるように油絵を扱い画面にのめり込んだ子。 初めて光とかげを色で表現でき、さらに自信がついた子。 最後まで質感にこだわりを持ち、画面に強い意志を吹き込んだ子。 つらくても理想の表現を追い続け、作品としての質をどこまでも高めた子。 今までの自分から、大いなる一歩を踏み出し、6年生としての描き方を理解した子。   当たり前のように各々が異なる制作スタイルを貫き完成した作品には、ひとつとして同じパイナップルは見当たりませんでした。全員が自分を通して見た、感じた、考えたパイナップルを表現できたこと。それが、これから作品をつくる際に、どれだけ自信となり、どれだけ助けとなってくれることでしょう。 小学生クラスや鉛筆デッサンから学んだことが軸となり、深まる子供達の表現は、まさにこの季節、たくさんの陽を浴び、色を濃く美しくしていく緑のようでした。季節の変遷と子供の成長。実に見事な3ヶ月でした。
パイナップルと春~子供上級クラス~
[小学生高学年] 2017.06.12
パイナップルと春~子供上級クラス~
子供上級クラスでは、約2ヶ月かけて制作した観察画「パイナップルと春」が、先日完成しました。 毎回和やかな雰囲気の中、初回に相応しい充実した制作となりました。 1枚にかける時間が増え、小学生クラスの時にはできなかった技法や表現に進んで挑戦する姿が多くみられ、それぞれの「絵の中でやりたいこと」が自然と滲みだす作品達。作者の等身大の「今」がビシビシと伝わってきます。 今回は特に「絵をつくる」ことにポイントを置いて進めてきました。 モチーフの描写や配置、色の選び方、それぞれが絵を描く上で欠かせない要素ですが、それら全てがうまく組み合わさり、心地よいバランスをとってこそ初めて見えてくる美しさがあります。さらにそこに作者の「こんな絵にしたい」という意志を、存分に注ぎ込むことによって表現される作品としての魅力。偶然ではなく、意図してそれらを行う。それぞれのモチーフを描いて終わりではない、その先にある工夫。ひとつひとつの工程で妥協せず、腰を据えて行えるのは、やはり上級クラスだからこそ。先人の名作に学び、敬意を持ち、指導者の言葉を吟味し、自分の思いに忠実に判断を下す姿は、まさに子供から大人へ成長しつつある思春期を迎える彼ららしいものでした。 6月は聴想画。さらに一歩進んだ彼らの「今」が見られることが、とても楽しみです。
子供上級と子供油絵
[小学生高学年] 2017.04.10
子供上級と子供油絵
新年度も一週間が過ぎました。桜が最盛を迎え、新たなメンバーを迎えたそれぞれのクラスは、明るい雰囲気に包まれています。子供上級、子供油絵の両クラスも、少しの緊張と大きな期待を含んだ、ステキなスタートを切ることができました。今まで小学生クラスで培った力を、子供上級クラスではより深め、子供油絵クラスでは新たな画材に挑戦することを目標に行っていきます。どちらも実力はお墨付きの高学年ばかりです。最初の作品のテーマは「パイナップルと春」。大きくて複雑なパイナップルと、自分で見つけた春のものを組み合わせて制作していきます。上級クラスでは早速パイナップルと向き合い、黙々と描写。線の一本にこだわりを持ち、実の部分のリズムを工夫したり、葉の重なりを捉えたりと、自然にモチーフと対話していく姿はさすがの一言。油絵クラスは、パイナップルと組み合わせるアイビーの葉を辻の自宅に探しに行き、自ら選んだものを構成してまずはデッサン。初めての油絵を楽しみにしていた子は、すぐに道具を使えず少し残念そうでしたが、油絵は準備がとても大事。納得して画面の構図を熟考していました。小学生クラスと異なるのは、道具や制作時間だけではありません。制作において「自ら獲得していく」ことがより重要になっていきます。モチーフも自分で考え、構図や構成、色、そしてどんな絵にしたいかという意志。順を追って作品を構築していくには、能動的な働きかけが必須です。高学年になった今だからこそ出来る、また今しかできない作品づくり。張り切っていきましょう。
新しい春!
[小学生高学年] 2016.03.20
新しい春!
油絵クラスでは珍しく、白梅を色紙仕立てにしました。ひな祭りの頃に庭の老木を愛でながら自分でひと枝を選んだのが新鮮でだった様です。今年は花付きが良すぎて、描くのはちょっと大変そうでしたが、莟や蕊の表情まで丁寧に描いてくれました。面相筆を用いて薄墨で骨描きの練習を重ね、次第に線を磨く事への関心が高まり、ピンと張りつめた静かな時間に圧倒されました。しばらくすると細い線も自在に描ける様になり、顔彩で色を添える頃にはすっかり自信に満ちた表情になっていました。 数年前に、講師の中上がこども達にも日本画の素晴しさを伝えたい!と、鳥獣戯画や紅白梅図屏風などの模写を考案し、熱意溢れる指導をしてくれた事が、今回の作品群にも生かされています。 最終回の合評会で、アトリエ5は自分らしい絵を描けるのがいい、同じテーマでも他の人が違う考えを持っているのがおもしろい、落ち着く場所、工作や季節の楽しい制作があっていいなど、逆にアトリエ5へのエールも多く、作品だけでなくすっかり成長したこども達が眩しく感じられました。 新しい春が始まります。この作品を最後に卒業する生徒さんもいますが、自分の考えを信じて、それぞれの場で力を発揮していきましょう。また、ご家庭のご支援にもここに改めて御礼申し上げます。    
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