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立体を直接描く
[中高生クラス] 2018.03.12
立体を直接描く
前回の、限界まで細部を観察する細密描写の次に行ったのは『木炭デッサン』。大きな植木鉢を描画用木炭を使用し制作しました。同じモノトーンによる制作ですが、鉛筆と木炭では画材の特性が大きく異なります。細密に向いている鉛筆から一転、大きな塊を『線』ではなく『面』で捉え表現すること。また鉛筆よりも幅広いトーンが使用できる木炭なので、それを活かし繊細な色をつくることなどが今回の目標です。両方とも、ものを『立体的』に描写する上で欠かすことのできないことです。 木炭は定着力(紙にくっつく力)がほとんどないその特徴から、それ自体を使って描き重ねていくというよりも、まず紙の上に炭の粉を乗せ、それらをガーゼや食パン、ねり消し、そして手や指を活用し形を起こしていくという進め方をします。木炭をつけては取り、またつけて取る。制作中の体の動きも大きくなり、手はすぐに真っ黒になります。直接紙に触りながらの制作は、さながら砂遊びや粘土をこねている様です。鉛筆や筆を使用した描写と違う作品との『距離感』。紙の上で実際にモチーフを作っているようなダイレクトな感覚。この『直接的』が『立体的』をつかみ取る為のきっかけです。鉛筆や筆でのある意味『間接的』な描写に変な慣れ方をしてしまうと、ついつい観察の対象や目の前の作品と自分との間に妙な隔たりを感じる場合があります。テレビの画面を通して見ているかのような、どこかよそよそしいその感覚は、奥行きを消し去り、作品を意図せず『平面的』にしてしまう危険があります。それらに支配されず、大切なのは鉛筆や筆を使用していても、それらが自分の指先であるかのような意識、油絵でもキャンバスに直に触れているイメージ。今回の木炭デッサンで知り得た技術より大切なこれらのことを忘れず、作品に立体感、つまりは深みと広がりを与えていって欲しいです。
神は細部に宿る
[中高生クラス] 2018.02.02
神は細部に宿る
新年を迎え、中高生クラスではそれぞれのスキル向上、視野の広がりをテーマに、ひと月ごとの制作が始まりました。初回となる1月は、質感やディティールを徹底的に描きこむ『細密描写』。ウルメイワシや飛魚の干物をモチーフに鉛筆デッサンを行いました。今まで抱いていた鉛筆デッサンのイメージを超え、『ここまで描くことができるんだ』と新たな認識を獲得し、表現の幅を広げることがねらいです。また、鉛筆という一見慣れ親しんだように思われる画材も、使い方によってまだまだ多くの可能性が残っていることを知り、濃淡による『美しさ』を感じ取るまでに至って欲しいという講師の思いもありました。 カッターで鉛筆を削りながら集中力を高め、使用する種類を選択し、筆圧や芯の角度に気を配り静かにタッチを重ねていく。白い絵皿と干物のコントラストを感じ、魚の持つ独特の皺や表情を写し取っていく。陰影の持つ繊細な移り変わりを深く観察し、紙の白さを『空間』にしていく。どの作業も気を張り詰めるものばかりで、それぞれ学校を終え息つく間もなく取り組むことは大変なことだったと思います。その頑張りあってか、皆表現への新たな一歩を踏み出すことができていました。とても素敵な、今鉛筆デッサンを行っている小学生から大人まで参考に見せたい作品が仕上がりました。   『木を見て森を見ず』という言葉があります。細部ばかりにとらわれず、全体を望む広い視野を持つことが大切という意味です。一方で『God is in the detail(神は細部に宿る)』という言葉もあります。広い視野と共に細部にこだわる熱意、そのバランスが重要です。今回は、自分にとってその細部が一体どこまでなのか、言い換えれば『木』なのか『葉』なのか『葉脈』なのか、もしかするとさらにその先なのか、それを知る制作でした。同時にその後ろには大きな『森』があることも忘れてはいけません。柔軟な視野を自在に扱えるように、2月の木炭デッサンもそれらを意識して行っていきましょう。
白熱した発表会
[中高生クラス] 2017.12.22
白熱した発表会
制作:2017 12月 ◎感想/講師:吉田一民 今年最後のクラスでは夏過ぎから約4ヶ月かけて描いた作品の発表会を行いました。 発表会は毎回のように白熱するのですが今回は講師の先生と保護者の方々に加えて、特別ゲストで来てもらったアトリエ5卒業生でもあり、現在美術大学に在籍している2名を加えての発表会という豪華なメンバーでのスタートになりました。 今回の課題モチーフは基本的に白や透明なものを中心にしたこともあり、出来上がった生徒作品も非常に個性豊かになり、1人1人の発表もタイトルから内容の説明まで非常に多彩だったと感じます。発表者も質問等にしっかりと受け答え出来ていて成長した所を見ることが出来ました。 本来は発表に対する講師陣のアドバイスで終わるのですが今回は現大学生からの素晴らしく的確なコメントも飛び交い、目の前にある作品だけでなくこれからの未来に対する「一歩先の話合い」が出来ていたのではないかと思います。発表会が終わってみれば、程よい疲れの中に自分の目標に対して手応えがあった人も多いのではないでしょうか。今回来て頂いた保護者と大学生の方々に改めてお礼を申し上げたいと思います。充実した時間ありがとうございました。また、クラスの皆もお疲れ様でした。年末年始でゆっくり休んで下さい。 今月で自分がアトリエ5に来てから2年が過ぎました。ふと思い出す事は生徒たちの成長と共に歩んできた日々です。週末、学校が終わった後の金曜日、暑い日も寒い日も、行事で疲れていても足を運び絵を描きに来ているその姿勢に驚きを隠せません。まさに継続は力なりという言葉の通りなのだと作品を見て感じる今日この頃です。これからもお互い頑張っていきましょう。良いお年を。 金曜日 中高生クラス担当 吉田一民
挑戦
[中高生クラス] 2017.12.20
挑戦
子供油絵クラスに続き、先週は木曜、金曜それぞれの中高生クラスでも、秋の制作合評会が行われました。『白と半透明のモチーフ』という難しいテーマに各々の挑戦が見られ、発表の言葉の中にも作品に対する深い思いが込められていました。タイトルによって作品の印象を決め、鑑賞する人に向けての意識を忘れず、良い部分だけではなく自作を冷静に見つめることができる真摯さ。とても良い合評会でした。 囲むほどの大きいモチーフは初めての中学生。今まで『つくって』いた画面構成を、今回は『切り取る』という違い、画面からはみ出る部分の多さ、奥行きのある空間、限定された色彩など、驚くほど新しいことが詰まっていました。描き始めは今までの経験をベースに順調に進んでいましたが、徐々にこの課題の難しい点に気が付き、後半は頭を悩ませることが多くなりました。『こうしよう、こうやって進めよう』という意志の明快さが、『本当にこれでいいの?』という自身に向けての疑問に変わる。新たな問題が見えてくるということは、それだけものを見る目が養われてきたということ。絵に対する視野が広がってきたということ。今回、前作よりも作品に対して疑問を投げかけることが増えたのは、小学生ではなく中学生としての挑戦、取り組みが深まってきた成長の証です。その問題に最後の最後まで粘り答えを見つけようとした姿勢はとても素敵なものでした。かげの色の作り方や、油絵としての形のとり方、空間表現…。見つけた課題と答えをこれからも追求していって欲しいです。 一方、それらの経験も豊富になってきた高校生は、挑戦することの難易度もどんどん上がっていき、その分新たに見えてくる問題も難解になってきました。それにより、絵を描くということは『ものを描く』ということと同時に『空間を描く』ということであると少しずつ理解してきたように思います。何もないと思うところにも、何かと決めて絵の具を置かなければならない。ひとつのものを描きこむということは、周りとのバランスを考え行わなければならない。鉛筆デッサンにおいても、形の正確さはもちろん、さらにその中で自分が感じた『美しさ』を表現しなければならない。自分の理想に近づいていくために『必要』なことが後から後から湧いてきます。その膨大さに一瞬気が遠くなり、嫌になってしまうこともあるかもしれません。しかし忘れてはいけないことは、それらを『楽しんで』行うということ。辛さと共に塗った絵の具は、人の心を動かしません。この問題にどう答えようか、一番面白い方法は何だろう、それらを考え、実行することが、実は本当の『挑戦』でもあります。必要性をただのノルマとしてではなく、未知なる表現へと転換していくこと。時間がかかる挑戦ですが、きっとできると信じています。一歩一歩焦らずに進んでいって欲しいです。 このメンバーと共に制作できるのも、残り数カ月。良い影響を受け合うことができる素敵な仲間です。最後まで楽しく制作しましょう。  
白と透明のモチーフ
[中高生クラス] 2017.10.27
白と透明のモチーフ
中高生秋の制作も折り返しを迎えました。今回は白、透明をテーマに、全員で囲み型のモチーフを描いています。限定された微妙な色の差、その中に潜む美しい陰影、重なりによる高さと奥行きが、作品づくりにどのように影響してくるのでしょうか。中学生はほぼ初めての設定なので、トリミングから丁寧に行い、ねらいを維持しながらコツコツと進め、高校生はさらに油絵としての表現を深めることに集中し、毎回キャンバス上で起こる現象に反応しながら、模索を続けています。 今回のモチーフのねらいとして、ひとつは色彩を押さえたものの描写、もうひとつは空間としての表現を設定しました。色彩を極力廃したモチーフは、浅い観察では単純な色調に陥り、作者の持つ魅力的な表現を黙殺してしまいます。限定された中に、どれだけの色彩が眠っているのか、それを発見し、揺り起こすことが求められます。そのヒントは、白さが目立つ明部よりも、それぞれのモチーフが関係しあい生み出された陰影に隠されています。質感、フォルムの差からそれらを読み取り、豊かな画面を目指してほしいです。同時に、囲み型の大きいモチーフ特有の、広い空間表現も忘れてはいけません。特に中学生には、『高さ』と『前後の重なり』を意識することは、今までの経験上、難易度がグンと上がった設定となり、うまくいかないこともあるかと思います。しかし、平面的な単一視点ではなく、ものを立体的に、複数の視点から観察し表すことこそが、画面の中でモチーフを単体で描くだけでは生まれない、『空間を描く』という絵画の新たな魅力へと繋がっていきます。その為には、配置されたものの『関係性』を見つけ出すことが重要です。人と同じように、もの同士もお互い影響し合うし、人と同じように、ものにも裏の面が存在します。それらを気にしながら向き合うだけで、モチーフは今までとガラリと変えた表情を見せることでしょう。 それぞれが、自分の目指す表現へと近づいていく為には、描くものへの愛情、理解が不可欠です。白と透明に、どのような自分の『色』をつけていくのか、ここからが正念場です。  
壁を越えて
[中高生クラス] 2017.07.29
壁を越えて
中高生:油彩 制作:2017年4月〜7月 ◎感想/講師:吉田一民 中高生の皆さん、春から夏へかけての油彩制作お疲れ様でした。学校の行事や部活動、勉強、進学と忙しい中、よく集中して描いていました。 皆は今回の作品を描いてみてどうだったでしょうか。中学生は「サザエとサンダル」高校生は「パイナップル・紐・ボウルとミラー」でした。二つの課題に共通する部分は、其々のモチーフの要素を生かすような配置を作ることと、個々のモチーフが持つ特徴を筆で表現することでした。 今回の合評会で完成した作品を見ると構図や色筆のタッチなど様々な工夫と自分ならではの表現が出来ていて、一つ上の「大人の作品」になってきたという印象を持ちました。本人たちは制作の中で悩み乗り越えなければならない 所も多かったと思うのですが、素晴らしい作品に仕上がったということは自分自身が非常に勤勉に真摯な姿勢で向き合った結果だと感じます。本当にお疲れ様でした。 「自分と向き合うこと」は自分の未来を見つめることだと思います。これからも失敗を恐れず色んな事に挑戦してみて下さい。失敗も成功も自分の未来へと繋がります。必ずしも成功する必要性はありません。失敗により壁を越えることもあります。全てが必要な要素の一つなのです。これからも自分のペースで一つ一つ壁を超えて行きましょう。これからの未来に出来るであろう作品を楽しみにしています。
過程として
[中高生クラス] 2017.07.28
過程として
子供油絵クラスに続き、中高生クラスも前期の合評会を行いました。水、木曜クラスでは、サイズ、技法、キャリアも様々なメンバーの中、お互いの発表に刺激を受け合いながら、とても充実したものとなりました。 素直な表現が輝く中1の作品から始まり、新しい表現を模索する高校生の油絵、最後に描写力を深めた高校生の鉛筆デッサンと、幅広い年齢、技法でしたが、全員がこの一作に込めた思いや苦悩をしっかりとした姿勢で発表できたことが講師としてとても嬉しいです。 人生で最も多感な時期に、日々変化する自己を見つめ、新たな価値を手探りで獲得せんとする姿。そしてそれをなんとか形にする苦しみ。『自分のやりたいこと』と現実のギャップ。その全てが詰まった作品でした。自分の中のハードルを下げて、今まで成功したことを同じように行い、無理やりに作品の完成度を上げることもできた中、誰一人としてその選択を行わず、失敗するかもしれない未知の表現へと自然と踏み出せていたことが画面に焼き付き、作者の現状を体現しているかのようでした。特に高校生は、発表の中でも『これで満足しているわけではない』といった表情がうかがえ、今、まさに今、挑戦している真っ最中だ!と、言葉にせずとも気持ちが伝わるものでした。 『過程の一枚』。これから長く続いていく表現の道中、今回の作品を是非そのように捉え、飽くことなく今以上にひたむきに多くを吸収し、自分の表現へ繋げて欲しいです。子どもから大人へ成長するまさに人生の過程であるこの時期に、悩みや失敗を恐れず、今だからこそ出来る思い切った挑戦と、打算のない高い理想を、どこまでも追求して欲しいです。いつか、描き続けた先で足が止まり、顧みた時、きっと今回の作品がひとつの道しるべとして在ることを信じています。 迷うことを恥じない制作。秋からも頑張りましょう。
深め、そして伸びやかに
[中高生クラス] 2017.06.02
深め、そして伸びやかに
中高生クラス、今年度最初の制作『サザエとサンダル』『パイナップルとミラー』も、折り返しを過ぎました。 持参したサンダルとサザエを工夫して構成し、子供油絵クラスよりひとつステップアップした方法で描き始めた中学生。水曜日のクラスには、初めての油絵に挑戦している生徒もいます。丁寧な観察と豊かな感性で配置、構成を決め、下地作りから着実に絵の具を重ねています。それぞれが持参したサンダルは、どれもその生徒自身の個性を表しているかのようで実に面白く、そこから選ぶ色やタッチも納得してしまうものでした。少しずつ『自分の表現を深める』ことを考えていって欲しいです。 高校生は、初めての囲みモチーフに戸惑いながらも、皆で相談しパイナップルやボウルなどの位置を決めました。モチーフの組み方ひとつで、描くイメージは大きく変わります。最終的に決まったモチーフは、アグレッシブで若さを感じるものとなりました。その周りにぐるりとイーゼルを立て、中学生よりも大きいF10サイズのキャンバスに向かいます。囲みモチーフは観察する空間が広くなり、それに伴い描く方法もより多様となります。それぞれが『この絵で描きたいもの』をしっかりと考え、進めていくことがとても大切です。小さくならずに『伸びやかな表現』を目指していって欲しいです。 ここからいよいよ後半戦。真剣に絵と向き合うと悩みは尽きません。どんどん悩んで納得のいく表現を目指しましょう。
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