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白と透明のモチーフ
[中高生クラス] 2017.10.27
白と透明のモチーフ
中高生秋の制作も折り返しを迎えました。今回は白、透明をテーマに、全員で囲み型のモチーフを描いています。限定された微妙な色の差、その中に潜む美しい陰影、重なりによる高さと奥行きが、作品づくりにどのように影響してくるのでしょうか。中学生はほぼ初めての設定なので、トリミングから丁寧に行い、ねらいを維持しながらコツコツと進め、高校生はさらに油絵としての表現を深めることに集中し、毎回キャンバス上で起こる現象に反応しながら、模索を続けています。 今回のモチーフのねらいとして、ひとつは色彩を押さえたものの描写、もうひとつは空間としての表現を設定しました。色彩を極力廃したモチーフは、浅い観察では単純な色調に陥り、作者の持つ魅力的な表現を黙殺してしまいます。限定された中に、どれだけの色彩が眠っているのか、それを発見し、揺り起こすことが求められます。そのヒントは、白さが目立つ明部よりも、それぞれのモチーフが関係しあい生み出された陰影に隠されています。質感、フォルムの差からそれらを読み取り、豊かな画面を目指してほしいです。同時に、囲み型の大きいモチーフ特有の、広い空間表現も忘れてはいけません。特に中学生には、『高さ』と『前後の重なり』を意識することは、今までの経験上、難易度がグンと上がった設定となり、うまくいかないこともあるかと思います。しかし、平面的な単一視点ではなく、ものを立体的に、複数の視点から観察し表すことこそが、画面の中でモチーフを単体で描くだけでは生まれない、『空間を描く』という絵画の新たな魅力へと繋がっていきます。その為には、配置されたものの『関係性』を見つけ出すことが重要です。人と同じように、もの同士もお互い影響し合うし、人と同じように、ものにも裏の面が存在します。それらを気にしながら向き合うだけで、モチーフは今までとガラリと変えた表情を見せることでしょう。 それぞれが、自分の目指す表現へと近づいていく為には、描くものへの愛情、理解が不可欠です。白と透明に、どのような自分の『色』をつけていくのか、ここからが正念場です。  
テレピンを使ってモチーフの質感に迫る
[デッサン油絵] 2017.09.15
テレピンを使ってモチーフの質感に迫る
    7~8月のおとなクラス色鉛筆画では、前回に引き続きテレピンを用いた方法での制作を行いました。  ※テレピンを用いた方法の特徴については前回のブログをご覧下さい。   今回のモチーフ「サザエ」では、1つのモチーフの中に大きく3種類の質感がありました。  ①殻の外側のゴツゴツ感  ②貝の模様  ③殻の内側の真珠色 この質感をどう表すかがポイントでしたが、2回目という事もあり、それぞれ試行錯誤しながらテレピンの効果を上手く使って描き進められていました。 よく観察して描く工程と、テレピンで色が溶けだす偶然性を利用した工程が何層にも重なり合い、貝の複雑な模様や、殻の内側の何とも言えない色合いに上手く繋げる事ができました。   また、このモチーフでは質感の複雑さもさることながら、形についても複雑で難しかったと思いますが、そこも丁寧に追えていてとても良かったです。 色鉛筆は、完全に消す事が難しい画材です。 形が複雑なモチーフでは、「早く色を塗りたい!」という気持ちを抑えつつ、最初の鉛筆での下書きを丁寧にする事が大切です。 そうする事で色鉛筆に入ってからの描写をスムーズに進められます。   今回のサザエは、形にしても質感にしてもとても根気のいるモチーフだったと思いますが、完成を急ぎ過ぎず1色1色を丁寧に重ねる事ができました。 その人にしか作りだせない色がしっかり絵に出ていると思います。 夏の終わりに相応しい素敵な作品が完成しました。
日本画:完成—紙風船の構成
[日本画水彩] 2017.09.13
日本画:完成—紙風船の構成
じっくりと時間をかけて取り組んだ「紙風船」の構成による日本画作品が完成しました。先日の合評会にて、皆様より制作を振り返っての感想を頂きました。   ・写生をもとに描いてきたことが多かったが、絵を意図的に「創る」ということに考えが及んだ ・見て描くだけではない、想像力をフル回転させることができた ・一つの絵を創るのに、考える要素の多さを感じた ・画材の扱いに慣れ自信がついた ・描きながら新しい発想が湧き、新しい技法にも挑戦できた   「色」を中心に絵づくりを考えていく今回の行程は、新鮮でもありましたがいつもとは違うアプローチなので戸惑いや困難さを示される場面もありました。しかしそんな感触をも前向きに捉えて制作されている姿が素晴らしかったです。着実に色づくりをしながら新たな挑戦も取り入れ、中盤以降には皆さんそれぞれに全く違う作業で絵に向かわれていました。同じテーマでありながら多様な展開となる画面に、こちらもとてもワクワクさせていただきました。経験値に関係なく、お互いに切磋琢磨し合えることも、大きな励みになっていたことと思います。   用意された順序に沿って失敗なくゴールまで辿り着くことではなく、想いを反芻しながら自分に必要なものを見据え見定め進んでゆく過程。そこにある価値や気付きが、作品の魅力を支えています。今回の制作によって、それぞれにご自身の可能性の広がりを実感していただけたのではないかと思います。今後の作品づくりにどう影響してくるかが楽しみであり、またそれぞれの日常へも何かしらの形で活かされる場面があることを期待しています。     ===== 秋 の 展 覧 会 情 報 ===== 葛飾北斎を特集した展覧会が目白押しです。 その他、日本画関連の展覧会をご紹介いたします。   『北斎とジャポニスム展』 国立西洋美術館 10/21(土)~1/28(日)   『葛飾北斎 富嶽三十六景 奇想のカラクリ』 太田記念美術館 9/30(土)~10/29(日)   『パフォーマー☆北斎 ~江戸と名古屋を駆ける~』 すみだ北斎美術館 9/9(土) 〜 10/22(日)   『上村松園 美人画の精華』 山種美術館 8/29(火)~10/22(日)    『MOMATコレクション 特集 東山魁夷』 東京国立近代美術館 9/12(火)~11/5(日)  
秋の実りを描く
[デッサン油絵] 2017.09.12
秋の実りを描く
おとな火曜日クラスの顔彩の写生です。前回は庭のバラの花びらでぼかしの練習をご紹介しましたが、この夏の特訓の成果でしょうか、少し難度の高い秋の実りに挑戦しています。 シニアの方が多いのに皆さんとてもお元気で、とにかく意気込みが凄い!今朝もどしゃ降りの中カッパを着てびしょびしょなのに笑顔でした。「少〜しわかってきたみたい。それが嬉しくて、アトリエ5が楽しくて、、」と仰る。その素直な気持ちが、上達の秘訣かな? 描きたいモノを選び、描くことでその美しさに改めて気づく、、自分で見つける事に喜びがあるので指導は入れ過ぎず、基本的な技法に限ります。でも、何度も繰返しお伝えしていると、筆先に含む絵の具の量が程よくなり、ご自分のモノになっていくのがわかります。人の可能性は本当に無限ですね。絵はいくつから始めても大丈夫です! =秋の生徒募集= 【木曜日午前クラス】10:30〜12:30 月3回  ========================= ========================= ☆初心者の鉛筆デッサン体験レッスン☆(要予約) 内容:「ガラスのコップを描こう!」 受講料:2,500円→2,000円に割引き(10月末まで)       = 制作の流れ = ①基本の線の練習:縦と横・筆圧やスピードなど ②ガラスのコップのデッサン:形の取り方のコツ ③ガラスの質感:鉛筆のタッチを重ねて、濃淡を作る *鉛筆やモチーフなど用具は全て教室でご用意します。 *F4スケッチブックは当日お持ち帰りできます。
壁を越えて
[中高生クラス] 2017.07.29
壁を越えて
中高生:油彩 制作:2017年4月〜7月 ◎感想/講師:吉田一民 中高生の皆さん、春から夏へかけての油彩制作お疲れ様でした。学校の行事や部活動、勉強、進学と忙しい中、よく集中して描いていました。 皆は今回の作品を描いてみてどうだったでしょうか。中学生は「サザエとサンダル」高校生は「パイナップル・紐・ボウルとミラー」でした。二つの課題に共通する部分は、其々のモチーフの要素を生かすような配置を作ることと、個々のモチーフが持つ特徴を筆で表現することでした。 今回の合評会で完成した作品を見ると構図や色筆のタッチなど様々な工夫と自分ならではの表現が出来ていて、一つ上の「大人の作品」になってきたという印象を持ちました。本人たちは制作の中で悩み乗り越えなければならない 所も多かったと思うのですが、素晴らしい作品に仕上がったということは自分自身が非常に勤勉に真摯な姿勢で向き合った結果だと感じます。本当にお疲れ様でした。 「自分と向き合うこと」は自分の未来を見つめることだと思います。これからも失敗を恐れず色んな事に挑戦してみて下さい。失敗も成功も自分の未来へと繋がります。必ずしも成功する必要性はありません。失敗により壁を越えることもあります。全てが必要な要素の一つなのです。これからも自分のペースで一つ一つ壁を超えて行きましょう。これからの未来に出来るであろう作品を楽しみにしています。
過程として
[中高生クラス] 2017.07.28
過程として
子供油絵クラスに続き、中高生クラスも前期の合評会を行いました。水、木曜クラスでは、サイズ、技法、キャリアも様々なメンバーの中、お互いの発表に刺激を受け合いながら、とても充実したものとなりました。 素直な表現が輝く中1の作品から始まり、新しい表現を模索する高校生の油絵、最後に描写力を深めた高校生の鉛筆デッサンと、幅広い年齢、技法でしたが、全員がこの一作に込めた思いや苦悩をしっかりとした姿勢で発表できたことが講師としてとても嬉しいです。 人生で最も多感な時期に、日々変化する自己を見つめ、新たな価値を手探りで獲得せんとする姿。そしてそれをなんとか形にする苦しみ。『自分のやりたいこと』と現実のギャップ。その全てが詰まった作品でした。自分の中のハードルを下げて、今まで成功したことを同じように行い、無理やりに作品の完成度を上げることもできた中、誰一人としてその選択を行わず、失敗するかもしれない未知の表現へと自然と踏み出せていたことが画面に焼き付き、作者の現状を体現しているかのようでした。特に高校生は、発表の中でも『これで満足しているわけではない』といった表情がうかがえ、今、まさに今、挑戦している真っ最中だ!と、言葉にせずとも気持ちが伝わるものでした。 『過程の一枚』。これから長く続いていく表現の道中、今回の作品を是非そのように捉え、飽くことなく今以上にひたむきに多くを吸収し、自分の表現へ繋げて欲しいです。子どもから大人へ成長するまさに人生の過程であるこの時期に、悩みや失敗を恐れず、今だからこそ出来る思い切った挑戦と、打算のない高い理想を、どこまでも追求して欲しいです。いつか、描き続けた先で足が止まり、顧みた時、きっと今回の作品がひとつの道しるべとして在ることを信じています。 迷うことを恥じない制作。秋からも頑張りましょう。
テレピンを使って描写を深める
[色鉛筆画] 2017.07.14
テレピンを使って描写を深める
おとなクラスの色鉛筆画では、4~6月の3ヶ月をかけてパプリカの制作を行いました。 パプリカだけで3ヶ月も!?と思うかも知れませんが、今回は「テレピン」という油絵用の溶剤を使用する方法で描写を深める事に挑戦しましたので、期間を長めに設定しました。 今回のブログではこの描き方についてご紹介したいと思います。   まず、「テレピン」という画材の説明です。 テレピンは、松脂を蒸留してできる液体で、油絵具に混ぜると絵具をサラサラにできます。塗った後は完全に蒸発しますので、画面に残る事はありません。   このテレピンの性質を利用して『油性色鉛筆を用い、ある程度描き進める⇒テレピンをティッシュなどに付けて画面を軽くたたく(色鉛筆を溶かす)⇒色鉛筆で描き進める⇒テレピンでたたく』と何度か繰り返しながら制作を進めて行きます。 そうする事で、ただ描き進めていくだけでは得られない効果を出す事ができます。 効果は大きく3つあります。   ① 描き込みがし易くなる  色鉛筆にはロウが含まれているため、何度も重ねていくとその成分で紙がツルツルになってしまい、色鉛筆が滑って色が乗りづらくなってきます。 テレピンで溶かす事でそれを緩和し、さらなる描き込みを可能にします。   ②深い色が表現できる  色鉛筆の粉を溶かす事で、ただ塗るだけでは出ない複雑な色味を表現できます。   ③偶然性を生み出せる  色鉛筆は自分が描いた痕跡が積み重なって絵が出来ていく画材です。 それは色鉛筆の良い所でもあるのですが、一方で絵具のように、にじむ、垂れる、筆跡が残るなど、自分が意図しない所で偶然できる表情が生まれにくい画材でもあります。 テレピンを使う事で、その偶然性を引き起こし、それに反応して描き進めていく事で、絵に強さを出していきます。   今回は、皆さん初めてだったので戸惑いがあったと思いますが、テレピンを使った効果にうまく反応し、今までより一歩踏み込んだ作品が仕上がりました。 7月からは、テレピンでの描き方でサザエを描く事に挑戦しています。 サザエのゴツゴツした質感や複雑な色がどのように表現されるのか、完成が楽しみです!
日本画:紙風船の構成
[おとな美術] 2017.06.30
日本画:紙風船の構成
  今期の日本画クラスは紙風船をモチーフに制作を行っています。テーマは「色」。主なねらいは、色彩の構成による絵づくりと、特性ある日本画の絵の具の発色の研究です。日本特有の豊かな色彩の世界。暮らしや自然の中から見いだされてきた様々な色とその名の由来や、「襲(かさね)の色目」のように装束の色合わせの妙で四季折々の情趣を表現してきた文化を垣間見れば、古来からの日本人の色に対する繊細な感性を窺い知ることができます。改めて色を知り、色への想いを寄せ、自身の色彩感覚を知り深める機会としたいとも考えています。 鮮やかな紙風船は、自分ではなかなか選ばなかったかも、という声もありましたが、モチーフを自分なりに解釈し、どのような主題が引き出せるか?というところからのスタートでした。モノの描写としてではなく、色彩を主軸に、様々な要素のバランスで絵づくりを考えてゆきます。 例えば画の中に見せたい「赤」があるとして、その量は?形は?配置は?周囲の色は?ということを考えるだけでも幾つものパターンが考えられます。大胆なトリミングの構図、詳細な配色の計画… 下図を何点も作っては微妙な差による効果に気を配り、時間をかけ構想を練ってこられました。デザイン的な感覚が存分に刺激され、ウ~ンと唸りながらも意外と楽しい!と前向きです。 さてようやく下図や地塗りなどの準備が整い、これから水干絵具や岩絵具で描き進めてゆくところです。過去の制作から、墨・筆・膠・胡粉などの扱いに段々と親しまれた皆さん、近頃では胡粉を溶くのも慈しむような手つきです。絵皿にきれいな艶が出ていました。画材の魅力を丁寧に生かし、美しい発色とそれぞれらしい色の調和を目指していけたらと思います。   *** 展覧会情報 *** ◎『水墨の風』展  雪舟と長谷川等伯を中心に、日本における水墨画表現の多様な変遷に迫る企画。 洗練された美しい墨の濃淡に、涼やかさを感じられるのではないでしょうか。 出光美術館:〜7/17(月・祝)   ◎『川端龍子 ー超ド級の日本画ー』展  床の間にはない剛健な日本画の表現を切り拓いていった人物。 時事を捉えた画題、大胆な構図の大画面に闊達な筆致、冴えた群青色。 骨太な爽快さを味わえます。 山種美術館:〜8/20(日)
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